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在職定時改定の改正

      2021/10/04

厚生年金に加入して働く65歳以降の方は、70歳になるまでは厚生年金の加入者として保険料を納めなければなりません。

 

現行の制度では、65歳以降に納めた保険料が受給年金額に反映されるのは、厚生年金の加入上限年齢である70歳到達時、もしくはそれまでに退職した時の「退職改定」と呼ばれるタイミングのみでした。

 

高齢者の就労促進を進める動きは人手不足の背景もあり、ますます強まっています。事業主に対して、70歳までの就労確保措置をとるように努力義務を設けるよう、法改正もなされました。

 

高齢期に就労することの意義のひとつに「受給年金額を増やす」があると思います。その意義を実感してもらう為には、65歳以降に納めた保険料を早期に受給年金額に反映させ、働く高齢者の経済基盤を守る必要があります。今回はそのような背景を踏まえた改正となっています。

 

令和4年4月から導入される新たな在職定時改定は、冒頭で挙げた70歳到達時もしくは退職改定が、1年働くごとに納めた保険料に応じ年金額が積み増しされる仕組みとなります。導入後は毎年10月に、それまでの保険料納付実績に応じて増額した年金額が受けられます。

 

厚生労働省は新たな在職定時改定のついて試算を発表しています。

 

【年金額の増額目安】

・月額賃金(標準報酬月額)が100千円で1年間就労した場合

⇒年間で7,000円程度 (月々500円程度)

・月額賃金(標準報酬月額)が200千円で1年間就労した場合

⇒年間で13,000円程度(月々1,100円程度)

・月額賃金(標準報酬月額)が300千円で1年間就労した場合

⇒年間で20,000円程度(月々1,600円程度)

 

2018年度末のデータを基にすると、65歳以上の在職年金受給者の総報酬月額相当額は180千円から220千円がボリュームゾーンとなっています。このボリュームゾーンの中央値である200千円の方が、65歳から69歳までの5年間で受給する年金額は合計で約66,000円増える計算になります。

 

今回の改正により財政影響額は800億円、対象者は150万人が想定されているようですが、1年ごとに年金額が増額となりますので、在職老齢年金制度で受給年金額の調整対象となる可能性もあります。

 

今回取り上げた在職定時改定は令和4年4月以降に改正となる年金制度の中のひとつです。この他にも年金受給の繰上げ率の緩和、繰下げ年齢の上限引き上げ、また青色やオレンジ色で馴染みのある年金手帳も発行が廃止となり、令和4年4月からは基礎年金番号通知書に変更となります。既に年金手帳をお持ちの方も紛失、棄損での再発行は通知書のみとなりますのでご留意ください。

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