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在宅勤務と労災

   

新型コロナウイルス感染防止策としてテレワークが取り上げられ、その中から、「在宅勤務」が選択されるケースが増えています。

「在宅勤務」には、社員本人に業務内容や時間的裁量を与える方法と会社が業務内容や時間管理をする方法とがあります。

前者には、フレックスタイム制や事業場外みなし制が適用され、管理職や専門職が対象となるケースが多いといえます。

後者には、所定内労働時間管理や会社承認の時差勤務が適用され、事務職等の間接職が対象となるケースが多いといえます。

そんな中で、気になるのが労災との関係です。

はたして、在宅勤務ではどんな場合に労災の適用があるのでしょうか。

厚生労働省の「テレワーク導入のための労務管理等Q&A集」では、<事例>として次のように紹介されています。

” 自宅で所定労働時間にパソコン業務を行っていたが、トイレに行くために作業場所を離席した後、作業場所に戻り椅子に座ろうとして転倒した。これは、業務行為に付随する行為に起因して災害が発生しており、私的行為によるものとも認められないため、業務災害と認められる。”

では、こんなケースはどうでしょうか?

” 在宅勤務を主としている社員が、午前中自宅で勤務して、午後一番で会社の業務命令により公共交通機関で会社に向かう途中、自らの不注意で駅の階段を踏み外して怪我をした。”

事故は通勤災害でしょうか?

厚生労働省の「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」の中で、勤務時間の一部でテレワークを行う際の移動時間について、こんな記載があります。

こうした場合の就業場所間の移動時間が労働時間に該当するのか否かについては、使用者の指揮命令下に置かれている時間であるか否かにより、個別具体的に判断される。使用者が労働者に対し業務に従事するために必要な就業場所間の移動を命じており、その間の自由利用が保障されていない場合の移動時間は、「労働時間に該当」としています。

ということは、上記のケースでは、移動時間は労働時間となります。つまりは、在宅勤務における自宅という就業場所から、自らの会社という就業場所に移動するわけですから、住居から就業場所という通勤の定義にも当てはまらないことになり、事故は業務災害となる可能性が高いといえます。

会社にとっては、業務災害か通勤災害かの違いは、かなり大きな問題です。

ずばり、『 解雇制限 』の適用を受けるか否かの違いです。 この点を労働基準監督署に尋ねたいのですが、個別具体的な事案が出てからの判断になりそうです。

最後に在宅勤務にまつわる労災認定上の留意点を3つ挙げます。

1 業務時間と私的時間の区別を明確につけるべし(特にフレックスや事業場外みなしの場合は社員主導の意識付け必要)

2 業務の進捗状況についてはこまめに管理または自主報告するべし(業務遂行性の見極め)

3 業務の就業場所については限定するべし(業務起因性のポイント)

以上です。

 

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