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■企業ができる介護支援制度

      2016/02/09

昨今、日本は長寿化や出生率の低下により少子高齢化が到来しており、2020年には3人に1人が高齢者の面倒をみるという今までにない超高齢化社会が到来することになると言われています。少子高齢化が進行する中で、家族が病気になった場合の介護と仕事との両立の問題が深刻化し、社会問題にもなってきています。
介護は育児より突発的な場合が多いため、重要な責任を負う人材の労働力がいきなり損なわれてしまうこともあり、社員本人だけでなく、企業としても頭を悩ますこともあるのではないでしょうか。

今回は、社員が家族の介護が必要になったときの企業としてやるべきこと、やれることを、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(育児・介護休業法)をもとに、お話しさせていただきたいと思います。

育児・介護休業法では、介護にかかる休業や措置について次のような制度を定めています。

1・介護休業
労働者が申し出により、要介護状態の対象家族を介護するための休業をいいます。対象家族1人につき、1の要介護状態ごとに1回とることができ、通算で93日まで休業することができます。2回めの介護休業ができるのは、要介護状態から回復した対象家族が再び要介護状態に至った場合です。

2・介護休暇
要介護状態の対象家族を介護および世話をするための休暇制度です。介護休業との違いは対象家族の身体の介助だけではなく、病院への付き添いや、介護サービスの提供を受けるために必要な介護保険等の手続をすることの代行、対象家族のために行う買い物や家事などをすることをいいます。取得できる日数は、年に5日、対象家族2人以上の場合は10日です。

3・勤務制限
労働者が請求したときに 会社は一定以上の残業や深夜業務をさせてはならない制度です。時間外労働については、1か月24時間、1年150時間を超える時間外労働をさせてはいけません。深夜労働については、午後10時から午前5時までは労働させてはいけません。
ただし、次の者は対象外となります。
勤続1年未満の者
週の所定労働日数が2日以下の者
深夜に介護できる同居の家族がいる者(深夜労働の場合)
所定労働時間の全部が深夜にある者(深夜労働の場合)

4・勤務措置
要介護状態にある家族を介護する労働者の申出に基づき、所定労働時間の短縮(短時間勤務制度)、フレックスタイム制または時差出勤の措置を講じなければなりません。
期間は介護休業の取得と通算して93日までとなります。

5・その他要件等

●要介護状態とは
負傷、疾病、又は身体上もしくは精神上の障害により2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態をいいます。
●介護休業等を取得できる対象者とは
要介護状態にある対象家族を介護する男女労働者です。日々雇用される者は対象外です。
一定の範囲の期間雇用者も対象になります。

●労使協定で対象者の除外ができます。
労使協定を締結すれば、一定の範囲の労働者は制度利用の対象外にすることができます。例えば、入社1年未満の社員、週2日以下勤務の社員は対象外にするなど。

●介護の対象となる家族の範囲 配偶者、父母、子、配偶者の父母、並びに同居しておりかつ扶養している祖父母、兄弟姉妹、孫

●休暇中の賃金は無給でもよく、会社の判断で決めることができます。

●不利益な取扱いの禁止
介護休業等の申し出を理由に解雇・降格・不利益な配置への変更・減給及び賞与等において不利益な算定等、不利益な取扱いをしてはいけません。

●介護休業期間中の給付金 介護休業給付金
雇用保険の雇用継続給付の一つです。
介護休業を取得した65歳未満の一般被保険者で休業開始前2年間に賃金支払基礎日数が11日以上ある月が通算して12ヶ月以上ある者が、介護休業期間中の賃金が休業開始時の賃金と比べて80パーセント未満に低下した場合に最大3ヶ月間(93日)を限度として支給されます。給付金の額は 休業開始時賃金日額×支給日数×最大40パーセントです。

現在、介護を理由に仕事を辞める人は、年間10万人程度いるといわれています。安倍首相の打ち出した新しい政策の3本の矢の中では、介護施設設備と介護人材の育成によって20年代はじめにゼロにすることを目指すといわれています。そのためには、財源の確保のための介護保険料の引き上げ、消費税の引き上げなどや、介護職の人材不足の問題など簡単には解決できない大きな課題がでてくることでしょう。

そんな中、今後企業としてできることとして、介護支援制度についての知識をもち、社員のために仕事と介護の両立支援や情報提供をすることが望まれるのではないのではないでしょうか。

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