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労働時間の把握義務と給与計算の端数処理について

      2023/11/27

労働時間の把握義務は、従業員の労働時間を適切に管理することを使用者である会社に求めたものです。2019年4月の労働安全衛生法改正により、労働基準法のうち労働時間にかかる規定が適用される全ての事業場を対象に労働時間の管理が義務化されました。

対象となる労働者は、高度プロフェッショナル制度対象労働者を除く全ての労働者が対象となり、労働基準法第41条に定める管理監督者や裁量労働制の適用者も含まれることに注意が必要です。

今後は、客観的方法による労働時間の把握が必要となりますが、法律改正の主な目的としては、①従業員への安全配慮義務のため、②正しい給与計算により労働紛争を防ぐことの2点があげられます。

 

従業員への安全配慮義務

過重労働による健康障害を未然に防ぐために、労働時間管理は欠かせません。労働基準法第41条による管理監督者は、36協定による残業の上限規制は適用されませんが、労働時間把握は義務となりますので、タイムカードやパソコンのソフトなど、客観的な方法で管理をお願いします。

 

給与計算の端数処理

給与計算を正しく行うためにも勤怠管理は欠かせません。労働時間を適正に算定できなければ、未払い賃金が発生することとなり、賃金全額払いの原則にも違反することとなりますので注意が必要です。

例外として以下の端数処理方法は、常に従業員の不利となるものではなく、事務簡便を目的としたものとして認められ、違反とはされません。

 

  1. 一か月における時間外労働、休日労働及び深夜業の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること。
    • 1日の時間外労働、休日労働の30分未満の切り捨ては認められていませんのでご留意ください。
  2. 1時間当たりの賃金額及び割増賃金額に1円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数を切り捨て、それ以上を1円に切り上げること。
  3. 一か月における時間外労働、休日労働及び深夜業の各々の割増賃金の総額に1円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数を切り捨て、それ以上を1円に切り上げること。

 

 

まとめ

労働時間を算定する際に、勤怠管理の機器を導入し、1分単位で計算する企業が増えてきました。15分単位で労働時間を管理していた時に比べて、だらだら残業する風土が解消された、1分単位で算定されるので従業員間での不公平感が無くなったといった声を聞きます。未払い残業の発生リスクも抑えられますので是非導入をご検討ください。労働者にとって働きやすい環境をつくることは、良い人材の確保や定着に繋がると考えます。給与計算や勤怠管理についてお困りの際は、是非ご相談ください。

 

参考法令

労働安全衛生法第66条の8の3

事業者は第66条の8第1項又は前条第1項の規定による面接指導を実施するため、厚生労働省令で定める方法により、労働者の労働時間の状況を把握しなければならない。

 

労働安全衛生規則第52条の7の3

第1項 法第66条の8の3の厚生労働省令で定める方法は、タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切 な方法とする。

第2項 事業者は前項に規定する方法により把握した労働時間の状況の記録を作成し、3年間 保存するための必要な措置を講じなければならない。

 

参考資料

客観的な記録による労働時間の把握が法的義務になりました

https://jsite.mhlw.go.jp/shimane-roudoukyoku/content/contents/001303412.pdf

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