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複数事業所勤務の雇用保険の適用について

      2021/04/05

最近では、働き方の多様化により、複数の事業所で働く人が増えています。弊社のこれまでのコラムにおいても、複数事業所勤務者に関連した内容を何度かお伝えしておりますが、今回は、複数事業所勤務の場合の雇用保険の適用についてお伝えいたします。

雇用保険に加入できる要件は、31日以上の雇用の見込みがあること、週20時間以上の所定労働時間であることが要件ですが、現行の制度では、複数の事業所で働いている場合、一つの事業所での所定労働時間が週20時間以上でないと雇用保険に加入することはできません。

例えば、A事業所が週15時間勤務であり、B事業所が週18時間勤務の場合、合算すれば20時間以上にはなりますが、それぞれの事業所とも20時間以上でないため、雇用保険には加入できず、総労働時間で長時間働いていたとしても退職時に失業保険がもらえないことになり、生活の安定を維持できなくなる可能性があります。

先の法改正になりますが、2022年1月より、65歳以上の労働者を対象として、複数勤務の事業所の労働時間を合算して週20時間以上であれば、雇用保険に加入できるようになります。

 

加入要件としては

  1. 二以上の事業主の適用事業に雇用される65歳以上の者であること。
  2. 一つの事業主の適用事業における1週間の所定労働時間が20時間未満であること。
  3. 二つの事業主の適用事業における1週間の所定労働時間の合計が20時間以上であること。ただし、合計できるのは、申し出を行う労働者の一つの事業主の適用事業における1週間の所定労働時間が5時間以上であるものに限られます。

失業時の給付については、65歳以上の失業給付である高年齢求職者給付(一時金方式)が支給され、複数勤務のうち、一事業所のみを離職するときであっても、その離職した事業所での賃金に基づき算出して給付されます。

また、複数事業所勤務の場合の被保険者の手続きをするのは、労働者本人からの申し出が前提となり、申し出がなければ、会社は手続きをする必要はないのですが、申し出をしたことを理由として、労働者に対して不利益な取り扱いをしてはならないものとなっています。

この改正では、施行後5年を目処として、適用の状況、支給状況等を勘案して、その効果を試作的に検証していくとのことです。

まだ今の時点では、具体的な事務手続き方法等が明確ではないですが、今後、省令等で定められる予定です。労務管理をする側においては、複数事業所勤務者の場合の労災保険の手続きや時間外管理の仕方のときと同様、労務管理の負担は増える可能性はでてくるでしょう。今後、また詳しい情報が省令等で発表されましたら、お伝えしていきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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