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業務外の非違行為の処分について

   

労働者が業務以外の時間に何かの非違行為を起こしてしまった場合、当然に懲戒処分になるのではないかと思われがちですが、原則的には業務外での非違行為は懲戒処分の対象とすることはできません。なぜならば、業務外の行為はあくまでも私生活上の行為であって、労働契約上の労働者の義務はあくまでも労務の提供であるため、労働時間以外の行為は労働者の自由であるからです。

懲戒処分は、労働者と使用者との労働契約に基づき、当該労働契約に違反したときにのみ行うことができるものだからです。労働者と使用者との間において締結される労働契約の効力は、労働者が使用者に対して行う労務の提供そのもの、あるいは業務に関連する行為に対してのみ及ぶものであり、業務外の行為に対しては及びません。

 

しかし、労働者の業務外の非違行為が懲戒処分の対象になる場合が例外的にあります。過去の判例の最高裁の見解では、「その行為により会社の社会的評価に及ぼす悪影響が相当重大であると客観的に評価しうる場合」には、当該従業員を企業から排除することを認めています。具体的には以下のような場合に懲戒処分が認められることが多いようです。

1・企業の名誉・信用・社会的評価に重大な影響を与えた場合

2・企業の業務運営に損害を与えた場合

3・職場規律や職場風紀を乱した場合

 

懲戒解雇が認められた例 小田急電鉄事件(東京高判平15.12.11)

・鉄道会社の従業員が勤務時間外に他社の電車内で痴漢行為を繰り返し、懲戒解雇となった。鉄道会社という職務上の立場において倫理規範に反する行為のため懲戒解雇が有効となった。

懲戒解雇が無効とされた例 横浜ゴム事件(最三小判昭45.7.28)

・工場作業員が、深夜に酩酊状態で他人の住居に侵入し逮捕され、罰金刑を受け懲戒解雇されたが、裁判所は、問題行為の性質や態様、労働者の職務上の地位等からすると、本件行為は「会社の体面を著しく汚した」という懲戒事由に該当するとはいえないとして、懲戒解雇を無効とした。

この例のように、行為の内容だけでなく、会社の事業の種類や非違行為をした労働者の会社における地位なども考慮されていることがわかります。

業務外の非違行為が懲戒処分の対象とできるのは、当該行為が、会社の社会的評価に及ぼす影響が相当重大であると客観的に評価される場合でなければならないとされており、当然には認められません。

会社の就業規則の懲戒処分の事由に「会社の信用、名誉を著しく傷つけたとき」と定めることはよくみられますが、当該行為がその規定に当てはまるかは、会社の社会的な評価への影響や会社の諸事情などで総合的に勘案されることになります。私生活上の非違行為があった場合に処分を行う場合は、当然に懲戒処分が有効と考えるのではなく、慎重な姿勢で臨むことが必要となるでしょう。

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