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■パワハラと指導の境界線

      2016/02/09

こんにちは、今回はパワハラと指導の境界線のお話です。
統計データ「平成26年度個別労働紛争解決制度施行状況」によると、総合労働相談のうち、民事上の個別労働紛争の相談内容では「いじめ・嫌がらせ」に関する相談件数は62,191件(前年59,197件)で3年連続トップです。これは会社にとっても大きな問題と捉えるべきです。

○パワハラの定義
厚生労働省は、職場のパワハラを以下のとおり定義付けています
『同じ職場で働く者に対し、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為』
この場合の優位性とは役職の上下でなく、立場や能力における優位性です。例えば、パソコン操作に詳しい部下がパソコン操作が不得手な上司に対してその知識による嫌がらせや部下全員による数の優位性をもって上司を無視するといった行為についても、パワハラの行為者・加害者になり得るかもしれませんね。

○パワハラ行為の具体例(ただしパワハラ行為のすべてを網羅するものではありません。)
(1)身体的な攻撃(暴行・傷害)
(2)精神的な攻撃(脅迫・暴言等)
(3)人間関係からの切り離し(隔離・仲間外れ・無視)
(4)過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)
(5)過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
(6)個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)など

パワハラで1番の悩みどころは、ハラスメントと指導の境界です。しかしながら、その境界ははっきりと区切ることができないものであることを前提としてください。なぜならば、その起こった事案の背景によって同じ言葉や行為でもその『必要性』と『相当性』が変化するからです。
<ケース1>
文書を提出した部下に大声を出して、「1字誤字があるだろ!ばかやろー!!!」
<ケース2>
人が多く出入りする建設現場にて、周りを確認せず作業車を動かした部下に大声を出して、「危ないだろ!ばかやろー!!」

この二つを比べただけでも同じ大声による「ばかやろー!!」という言葉でも印象は違うと思います。時に命に危険があるような場所では二度と同じ危険行為が発生しないように強い言葉が必要になる場合が多いですし、前者のケースでももしその提出書類がとても大事なお客様に出す書類だったらまた必要性が高くなってくることもあります。

つまり、指導する立場の方に必要である能力の1つとして、適した場所で適した言葉を選ぶというものが求められます。しかしそれすら、人の価値観によるものであるため、以下を参考に社内で認識を共有しましょう。

・部下の人格・名誉等を侵害するような言葉を避ける
・問題点の改善に繋がる具体的な指導を行う
・必要以上に大きな声や物をたたいて大きな音を出す等は避ける
・暴力行為は絶対に避ける
・部下の過度私的領域への介入は避ける
・衆目の前での指導になった場合にはより慎重に行うべき

最後に人の成長や会社の発展にはある程度の負荷が必要になる場合があります。そのため時には厳しい言葉をかけることや達成困難なノルマや課題を従業員へ課すこともあります。
それがパワハラ問題のリスクが内在しているとなると世知辛いですね。成長を促す場合、叱責や精神論を用いるのではなく、チーム編成の検討や理論だった達成計画を練らせる等の手段も選択肢にあります。(叱責や精神論が悪いというものではありません。)

相手の人格を否定するパワハラ行為を行うことも、パワハラ問題を気にしすぎて指導がまともにできないこともナンセンスです。『必要性』と『相当性』を思い出してください。状況に応じた適切な指導を使いこなせるようになりたいものですね。

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