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健康状態を踏まえた配置判断と安全配慮義務

   


判例ミーティングで取り上げられた事例から

 

本件は、毎週行われている判例ミーティングで取り上げられた事例のひとつです。白血病を患い、約半年間休業していた労働者が復職を希望した際、会社が原職復帰を認めず、別の業務への配置を命じたことの適法性が争われました。

 

本件の経緯として、まず押さえておきたいのは、主治医が当該労働者について「就労は可能である」と判断していた点です。労働者は、この主治医の意見を根拠として、原職への復帰を強く希望しました。

 

一方、会社は復職判断にあたり産業医の意見を聴取しました。その結果、産業医からは、元の職場環境は感染症リスクが高く、当該労働者の健康状態を踏まえると、業務内容や配置について慎重な配慮が必要であるとの指摘がなされました。会社はこれを踏まえ、原職ではなく、より安全性の高い業務への配置を決定しました。

 

これに対し労働者は、主治医が就労可能と判断しているにもかかわらず原職復帰を認めなかった会社の対応は不当であり、配置命令は無効であるとして争いました

 

裁判所は、本件において、会社が安全配慮義務を尽くしていたかという観点から検討を行いました。その際、主治医による就労可能との判断が存在することを前提としつつも、会社が産業医の医学的見解を踏まえ、具体的な業務内容や職場環境を考慮した配置判断を行っていた点を重視しました。そして、会社の対応は、労働者の健康に配慮した合理的なものであり、原職復帰を認めなかったこと自体は違法ではないと判断しました。

 

この判例から確認できるのは、安全配慮義務は、単に「働けるかどうか」という医学的判断のみで尽くされるものではないという点です。たとえ就労可能であっても、業務内容や職場環境によっては、健康への具体的なリスクが残る場合があります。会社には、そうしたリスクを踏まえ、配置を含めた実効的な配慮を検討することが求められます。

 

実務においては、主治医の意見と産業医の意見が異なる場面も少なくありません。本件は、そのような場合であっても、産業医の専門的見解を踏まえ、職場環境との関係で安全配慮義務を検討し、配置判断に反映させたかどうかが重要であることを示しています。

 

本判例は、復職時の配置判断において、安全配慮義務をどのように考え、どのように実行すべきかを示した、実務上重要な参考事例といえるでしょう。

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