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主治医の診断書のみで休職事由消滅とすべき!?

   

協成事件【東京地判 令和6年5月28日】

 

【事案の概要】

従業員(X)は、平成31年1月24日に交通事故にあった翌日より欠勤および年次有給休暇により就労しない状態が続いた。また、同年10月10日、うつ病の悪化により、1ヶ月の療養を要する旨の診断書を会社(Y社)へ提出した。

同年11月11日、Xは次のとおり整形外科および精神科の主治医による診断書を提出した。

整形外科の診断書には、病名と「現在当院通院加療中。従前の職務を行える程度に回復し、11月12日より復職を許可する。」とした内容であり、精神科医の診断書も、病名と「頭記障害は軽快しつつ、復職可能な状態であり、通常の就労に支障はない。」とする旨の内容であった。

 

11月27日、Xは産業医との面談も行い、その場では復職可能との判断には至らず、主治医の診療情報の提供を求めた。しかし、Xは診療情報提供同意書の「交通事故で」の文言を削除すれば、提供に同意するとしたが、Y社は文言削除の要請には応じなかった。

そのため、Y社および産業医は診療情報の提供を受けることができず、同年11月30日に自然退職により雇用関係を終了した。

Xは、地位確認を求めて提訴したものである。

【判決のポイント】

主治医の診断書は、患者の治療を任務としており、職場の実情には通じていない。

復職にあたり、通常の労務提供が可能かどうか。職場で配慮が必要なのかといった観点からの検討はせず、復職可能との診断書をもって、復職可能との立証がなされたわけではない。

産業医が復職可能の判断を検討するうえで、主治医からの診療情報の提供依頼を行ったのは相当である。

 

労働者は復職にあたり、復職可能の立証を行う立場でもあり、同時に復職に必要な情報提供等に協力する義務がある。

 

「交通事故で」の文言があろうがなかろうが結果は同じであったと主張するが、それを断定することはできない。

【SPCの見解】

主治医は一般的な日常生活が営めるように治療全般を担い、産業医は職場で健康的に就労できるかどうかの助言、指導を担う立場にあります。両者には明確な違いがあります。

今回の判例でも、主治医の診断書のみで復職可能となるわけでないと述べており、参考になりました。

もちろん、産業医の意見が常に優先されるわけでなく、最終的には事業主・企業側で判断することにはなります。

 

社労士事務所としては、就業規則に「復職する場合は、産業医(又は会社指定医)の面談、診断を受ける場合がある。」との文言を記載しておくことも大切になります。

また、「従業員は、主治医宛の医療情報開示同意書を提出するほか、その実現に協力しなければならず、従業員が正当な理由なくこれを拒否した場合には、当該診断書を受理しないものとする」も条文化することを提言します。

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