労働判例集
(13.04.24)業務外(私的時間)の兼業禁止はどこまで許されるか?

マンナ運輸事件 【京都地判 2012/07/13】
原告:運転手X  /  被告:運送会社Y

【請求内容】
Y社が勤務の合間や法定休日の兼業申請を4回にわたり拒否したため、Xは収入見込額・慰謝料の賠償を求めた。

【争  点】
勤務の合間や法定休日の兼業(バイト就労)申請を不許可としたことは不法行為にあたるか?

【判  決】
Y社の不許可は執拗かつ著しく不合理なもので、単なる労働契約上の許可義務違反を超えて不法行為に当たる。

【概  要】
トラック運転者であるXは、会社に対して、勤務の合間や法定休日にアルバイト就労(兼業)をする旨の申請をしたが、「Xは夜間も走行する運転手として時間外労働をしており、長時間労働になること」「過労で事故の危険があること」などを理由として4回にわたり全て拒否された。Y社では兼業許可基準を設けているが、その基準に抵触しない内容の申請(法定休日のバイト就労)も拒否されたことを不服として、Xは損害賠償を求めて提訴した。

【確  認】
【兼業が禁止できる場合とは】
兼業禁止は、労働契約上「特約」がある場合で、以下のような場合のみ禁止することができる。
① 兼業により企業秩序が乱された、または乱されるおそれが大きい場合
② 兼業により従業員の労務提供が不能・困難となった、または不能・困難となるおそれがある場合

※会社は従業員の私的時間について、従業員を支配・管理する権利はなく、会社の企業秩序に影響せず、会社に対する労務提供に格別の支障を生じせしめない程度のものは含まれない(橋元運輸事件、昭47.4.28 名古屋地裁)

【判決のポイント】
Y社の兼業許可基準は以下のように定められていた。
①兼業が不正な競業に当たる場合、②営業秘密の不正な使用・開示を伴う場合、③従業員の働き過ぎによって、人の生命又は健康を害するおそれがある場合、④兼業終了後Yへの労務提供開始までの休息時間が6時間を切る場合、⑤兼業の態様がY又は従業員の社会的信用を傷つける場合、⑥その他前各号に準ずる場合。
⇒ この許可基準自体については、その内容に照らして合理性があるとされた。

<Xによる申請内容と不許可処分の合理性>(ちなみに、XのY社での勤務時間は13:00-0:00である)
■ 第1申請:1日3.5時間(8:30-12:00)、D社にて構内仕分け作業    ⇒「不許可」は合理的(○)
■ 第2申請:1日4時間(1:00-5:00)、D社にて構内仕分け作業      ⇒「不許可」は合理的(○)
■ 第3申請:日曜のみ4時間(10:00-14:00)、D社にて構内仕分け作業  ⇒「不許可」は不合理(×)
■ 第4申請:日曜のみ3時間(18:00-21:00)、ラーメン店にて接客・皿洗い⇒「不許可」は不合理(×)
<第1申請> 兼業終了後Y社の勤務開始時間までの休憩時間が6時間を切るため、兼業許可基準①に抵触する。
<第2申請> Xの労働時間は、本業とバイト時間合計で293時間(トラック運転者の改善基準告示の限度時間)を超え、このような1日15時間もの労働は、社会通念上も過労を生じさせるといえる。
<第3・第4申請>法定休日は、XがYにおける労働義務を負わないという意味であって、Xがアルバイト就労をして労働することまで禁じるものではない。運転業務への格別の支障があるか否かを具体的にみると、Xは週休2日であり、法定休日であることをもってXの兼業申請を不許可とすることはできない。

【SPCの見解】
■本件は兼業をした労働者への懲戒処分の問題ではなく、事前申請の不許可が不法行為にあたるかという点が争点になっている珍しい事案である。判決では「Xは、Yによる不合理かつ執拗なアルバイト就労の不許可により、生活の足しとすべき収入が得られなかったなどの精神的苦痛を被ったことが認められ、その慰謝料額は30万円とする」と慰謝料も認められている。兼業には、残業代支払いの問題(1日の労働時間を通算して8時間を超えて働かせた方の会社に支払い義務あり)や、過重労働による労働災害が発生した場合の責任の所在の問題等があり、会社が兼業を禁止したいと考えるのは当然であるが、それでも勤務時間外は私的時間であり会社の管理が及ばないが原則なのである。
労働新聞 2013/4/15/2917号より

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